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MILESTONE ART WORKSの近況とお知らせです。 

「風景」山口馨【著】鳥影社

「風景」山口馨【著】鳥影社_c0084954_19274533.jpg「風景」山口馨【著】鳥影社_c0084954_19272492.jpg「風景」山口馨【著】鳥影社_c0084954_1927163.jpg作家・山口馨さんのお宅はギャラリーからさほど離れてはいないようで、ビルの向かいにある公園を横切って歩いていらっしゃるらしい。あるときは庭の草花でまとめた小粋なブーケをまたシャレた洋菓子などを持参されたり、服装・持ち物、ふるまい、気遣い等どれをとりあげても一貫した彼女らしさがあらわれていて、フワッとした内からの光を感じるかたです。色の好みは生成り、モノトーン、茶、ベージュでしょうか。爽やか、しかも深みのある雰囲気です。20数年前から時折企画展をみていただいていますが、ゆっくりお話する機会もなかったので近年まで小説を書いていらっしゃることは知らなかったのです。第2回・3回全国同人雑誌最優秀賞[まほろば賞]において優秀賞を受賞し、昨年秋、短編集「風景」が出版されました。すぐにご紹介をと思いながら・・・。お線香をいただいた日、短い時間ではありましたがお話する機会をもてました。お話のなかでいくつかのキーワードが「風景」短編タイトルとかさなっており、かつ私自身もイメージできる共通のキーワードでもありました。忘れないうちに書き留めておくことにしました。[黄八丈][月壷(ゲッコ)]。小説の内容は読んでいただく事にして、二つのキーワードは林屋清三氏関連のお話からの展開です。
[黄八丈]山口馨さんは林屋先生ともお親しいご様子。先生にお会いするために菊池寛実記念 智美術館を訪ねた折、黒にちかい[黄八丈]を着てお出かけになったとのこと。きっと希少価値といえる「黒八丈」なのだろう。今年の2月智美術館へ行きました。閑静な虎ノ門にある美術館は西久保ビルの地下1階にあり、地下におりる螺旋階段が日常と非日常の結界のよう。一段おりる事に現実から時間を超えた世界へ誘い、企画展示室のしつらえも水準の高い構成で壁面素材も暗めのスポットも作品それぞれと自然に向き合える空間になっています。黄八丈で現れた山口さんに林屋先生もたいそう満足されたようで、お話も弾んだことでしょう。そして螺旋階段を降りていく彼女の着物姿を思い浮かべ、きっと似合っているわ〜と。そして[黄八丈」今年の正月、友人から私の手元にも届けられたのです。友人曰く「生前形見わけ。着物わかる人少ないから、着てちょうだい」「・・・縁起でもない」まだ、しつけのかかった品物です。着物好きで目利き。70代半ば過ぎ、現在進行形で新しいお着物が増えています。「普段に着れば」と言われますが私とすれば着下ろすタイミングを考えるわけで、記念にのこるシーンを企画せねばと。
 [月壷]は韓国の白磁大壷。銀閣寺のチャリティー茶会につかわれました。林屋先生は柿伝(東京新宿)において茶の湯同好会茶席の席主をされており、昨年秋のお茶席に[月壺]に薄、山葡萄を生けられました。書院の壁には力強い井上有一の書「月」、床には水鏡にうつる月のような「月壺]。このお茶席の待ち合いの軸には造形作家・松原賢氏の「月盈」が掛けられ、壷に生けられた花材は松原氏アトリエがある那須高原から採取されたものでした。この茶席には出席はできませんでしたが、松原氏から送られてきたスナップ写真が強い印象でのこっていました。今年のお茶席では松原氏が床の掛け物を担っていらっしゃいますので、いずれかのお茶会にはぜひ出席したいと思っています。銀閣寺のお茶会の後、林屋先生からお手紙がとどいたそうです。「井上有一の[喝]はどうだったか?」など・・・。ちょっと立ち話をしただけなのだけどと話しておられましたが、お二人の手紙のやりとりが素敵でした。
 さて「風景」。家族・恋人などの人間模様、土地、季節、植物、風景。山口さんの美的センスでしょう、文章から色彩も豊かにイメージできるのです。白・緑・赤・黄色・青・・・。一つづつ読み終わると内容とタイトルの関連になるほど〜と。そして彼女にとってのお気に入りがタイトルにされストーリーとなっているのかもしれないと。どの話も好きなのですが[金魚]がお気に入りかな。縁日の金魚、すくうよりあの裸電球に照らされた四角い水槽の白さと鮮やかさな金魚の赤、数少ない出目金の黒。その一角がきわだって妙にドキドキしてた。登場人物の心境とちょっとかぶります。話のなかの陰陽の表現も登場人物の個性も、日常の風景の一コマにありそうで、こんな素敵なできごとはやはりなさそうで・・・もあり。
 山口さんとの短い語らいは短編読み聞かせのような時間でした。このほかの興味をそそられた話には、勝手なタイトルをつければ[鯛のおすまし]「おもてなし][寒中の禅寺]など、まだ小説にはなっていないお気に入りのエピソードやキーワードも多々ありそう、そのうち物語になるといいなあと。とりあえずまずは新刊「風景」を読んでみてくださいね。また文芸同人誌「渤海」の出筆もされています。機会があればこちらもお勧めします。
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by ysmile | 2011-07-11 19:51 | ■ 素敵な人々

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